オオカミくんと秘密のキス

「沙世?こんなことろでなにしてんの?」


春子の声がして後ろを振り返ると、春子は不思議そうな顔をしながら私を見ていた。




「あっ、いや!その…どこにしまったらいいのかなかなかわからない本があって手こずっちゃって!」


まさかここでキスしてたなんて親友にでも言えない…





「そっか。戸締りとか終わったしもう誰もいないから帰ろう!沙世のカバン持ってきたよ」

「ごめん、ありがとう!」


春子からカバンを受け取って図書室を出て鍵を閉めた後、職員室に行き鍵を戻して下駄箱に向かう。



まだ胸がドキドキしてる…


耳にかかった尾神くんの息や、おでこと口に触れた尾神くんの唇…

柔らかくて熱い…そんな感覚まで残ってる…

遠足の時とは明らかに違う。

ちゃんと全部覚えてる…



明日も図書室に来るとか言ってたけど本当なのかな?

図書室の一番奥のあの場所に…またいるのかな…







翌日


「おはよー」


いつものように春子と学校に登校した私は、席に座りながら春子と話していた。



ブーブー


話している途中に春子のスマホが鳴り、春子は画面を見ると席からスっと立ち上がる。




「お母さんからだ。ここじゃうるさいからちょっと電話してくるね」

「うん!」


春子は耳にスマホをあてながら、小走りで廊下に出て行った。1人になった私は口を手で押さえ、ふぁーと大きなあくびをする。



昨日はあんまり寝られなかったな…

ベットに入って目をつぶる度に尾神くんのこと考えちゃうんだもん…




ガラ…


すると教室の前のドアが開き春子が戻ってきたと思い目を向けると、教室に入って来たのは尾神くんで私と思いっきり目が合った。

ヤバイ!と思い目をそらすと、足音がどんどんこっちに近づいてくる音がする。うつむいていた顔をあげると、私の席の目の前には尾神くんが立っていた。





「な、なに!?」


驚いた私は、座っている椅子を後ろに引き尾神くんから離れようとする。




「はよ」

「お、おはよう…」


口元を少し緩ませて笑う尾神くんにドキドキしながら、口をもごもごさせて言う私。





ポン…


そんな私を見てクスッと笑う尾神くんは私の頭をポンと撫でると、後ろの自分の席にカバンを置いて教室の端に固まっている男子の元へ行ってしまった。



なに今の…

頭触られたよね…?


なんとなく自分の頭を触ると、尾神くんに触られた時の感触がまだ残っていた。



大きい手だったな…

あれが男子の手なのか…男子というか男の人の手って感じだった。