オオカミくんと秘密のキス

花火か~私もやりたい♪





「ん」

「え?」


すると、隣にいる凌哉くんがフォークに刺した肉を私に近づけてきた。


これは…食べろってことだよね…

いわゆる「あーん」てやつ…


でも、みんながいる前で食べるのはちょっと恥ずかしいな。





「ん」

「う…」


さっきよりも更に肉を近づけてきて、やや強引な感じを漂わせて来る凌哉くん。顔を見ると眉間にしわが寄っている。

これは食べないと怒られるパターン?



私は恥ずかしい気持ちを押さえながらも、髪を耳にかけて少しかがむ大勢を取り肉を口に入れた。








じーーーー……



みんなの視線が痛い程感じた私は、口をもぐもぐさせながら目線を前に向けると…






「こっち肉焼けてるぞ!」

「どんどん食べろ!」

「野菜も焼いてー」


私達を見つめていたみんなはクルッと目線を離し、必要以上に話したり少しオーバーに感じるくらいのアクションをする。

ペンションの店主までもそんな感じだ。





やりにくいなぁ…

それに超恥ずかしい。



友達の前なのに、凌哉くんはいつも通りに振舞ってくれるのは嬉しいけど…私はまだ慣れないや。

みんなに見られてると、どうしても恥ずかしくなっちゃう…



春子と柳田くん…早く付き合ってくれないかな。

色んな意味で身近にもう1カップルいた方がいいよ…








「今更だけどさ~部屋分けって今のままでいいの?」


店主から焼きたての肉をどっさりとトレーに盛ってもらっている妃華ちゃんが、思い出したように言った。





「部屋分け?」

「そう。男子だけの部屋だとむさくるしくない?」


妃華ちゃんのその一言で、弟達以外の男子全員の顔つきが変わる。




それって…

男女混合の部屋にするってこと!?







「絶対嫌だ!女子は色々あるし…部屋は男女分けるべきだよっ」


若干顔が赤い春子は、必死になりながら妃華ちゃんに訴えている。

申し訳ないけど私も春子の意見と一緒だな…





「夜中まで部屋で男女で遊ぶ位いいじゃん!ゲームとかトランプやったり語ったりとか…」

「あーそういうこと」

「あんた何かいやらしいこと考えてたでしょ?」

「ち、違うわ!」


春子と妃華ちゃんがまた言い争いを始めると、さっきまで私がやっていたなだめ役を今回は柳田くんがやっていた。




男女で夜中まで遊ぶ…か。

ますます修学旅行みたいだな!






「じゃー花火終わってお風呂済ましたら、男子の部屋に行くからちゃんと片付けておいてよ」

「了解~」


妃華ちゃんからの忠告に、柳田くんと溝口くんが返事をする。




決まっちゃった…

なんかドキドキするのは何故だろう…






「お前…」

「え?」


すると、隣に座っている凌哉くんが私の顔を覗きこんで来た。





「…何?」

「風呂上りだからって薄着とかで俺らの部屋に来るなよ」

「へ?」


薄着???





「肩出しと足出し禁止。あとうなじが見えるくらい髪上げるのもダメ」

「えー」


そんなに禁止があるの?

洋服のことはまだわかるけど、髪を上げるのもダメって厳し過ぎない?

お風呂上がり暑いからいつも髪を縛るのに…






「俺しか見てないものは、たとえ友達にでも見られたくねーんだよ」


凌哉くんはボソッとそう言うと、缶の炭酸飲料をグビグビと飲んだ。

私は一気に幸せオーラに包まれて、胸がドキドキと弾む。





凌哉くん…そんなこと思ってくれてたんだ!

そういう理由なら素直に従っちゃうよ♪








「わかった!」