オオカミくんと秘密のキス

妃華ちゃんが私に近づいてぎゅううっと抱きしめて来る。




「そこが沙世のいい所なんだよね~顔に似合わず♪」

「う、うるさいな!」


春子の言葉に私がすぐに返すと、3人で顔を見合わせて笑った。


この3人て結構いい組み合わせかも♪

中学の時に春子の他にもう一人仲の良かった女子がいて、中3の時に同じクラスだった為よく3人でいた事を思い出した。

その子とは時々LINEでやり取りしているが、中学を卒業してから一度もあっていない…


元気にしてるかな…

…って!こんな時に何考えてんだろ私…







コンコン


すると、女子部屋のドアをノックする音が…




「はぁーい」


妃華ちゃんが返事をすると、ドアがゆっくりと開いた。






ガチャ…



「…沙世いる?」

「凌哉くん!」


ドアから顔を除く凌哉くんに、私はすぐに立ち上がって小走りで近づいた。






「邪魔したか?」

「ううん!一息ついてたところ」


邪魔なんてとんでもない!

むしろすごく嬉しいっ




「そっか。ちょっと話せる?」

「うん?…いいよ」


私は春子と妃華ちゃんに声かけ、冷やかされながら凌哉くんと廊下に出た。






「どうかしたの?あ!もしかして洋平ってば何かしでかした!?」


早速やったか、あのトラブルメーカー…






「いや、あいつらおとなしくしてる。今桂吾と溝口が相手してくれてるよ」

「そう…よかった」


じゃあ…話ってなんだろう…?

もしかして何か嫌なことだったりして…






「…明日の夜。良かったら2人でどっか出かけないか?って言ってもこの辺なんもないから散歩くらいしか出来ないけど…」

「っ…!」


思いがけない凌哉くんのお誘いに、一瞬にして胸が弾む。

嫌なことかと思ってたから余計に嬉しくて、変なニヤケ方をしてしまう…







「行く!行きますっ!」


片手を上げて言う私を見て凌哉くんはクスッと笑い、私の頭を優しく撫でてくれた。



そのさりげない行為だけでも幸せ…


なんだろう…

地元から離れた所に来ているせいか、いつもよりも何倍もドキドキする。

やっぱり旅行っていいな。












「肉焼けたからどんどん食べてねー」


夜。

ペンションの店主がBBQを設置してくれて、私達は庭に出て夕飯を食べていた。





「うんめえ~」

「こぼさないでよ」


隣で肉を頬張る洋平をチラチラ見ながら、私も店主のおじさんが焼いてくれた焼きとうもろこしをかじる。


ジュージューと肉の焼ける音と匂いと、涼しい風が混じる。

みんなの笑い声が響いて、料理がより一層おいしく感じられる。



それに…

隣には凌哉くんがいるし♡







「後で花火やろうよ!」

「いいね!やろう!!」


肉を片手に妃華ちゃんが元気に提案をして、弟達や溝口くんが「イエーイ!」と叫んだ。