オオカミくんと秘密のキス

「わぁ~」


森林に囲まれた道をしばらく辿っていくと、一面の芝生と季節の花。すごく広いお庭で妃華ちゃんの話曰く、東京ドームとほぼ同じ広さの敷地で温泉もあるしテニスコート、フットサル、BBQなども出来るらしい。






「すごくいいところだね~」


空気も環境もいいし…




「でっしょ~?なんてったって新しく出来たばかりだからね!」


自慢げに胸を張る妃華ちゃんに続き、私達はペンションの中に入って一先ずチェックインを済ませ、部屋に案内された。






「いい部屋~」

「超いい!」


部屋の中の家具はカントリー調にまとめられていて、吹き抜けの大きな窓とベットが3つ。木のいい匂いがして、その部屋が一瞬で気に入った。





「当たり前よ!一番いい部屋2つ押さえたんだから」

「隣の男子の部屋もこんな感じなのかな?」

「あっちの方が人数が多いからここよりもう少し広いよ」

「ふーん…」


春子は頷きながら窓の外に目をやると、隣の男子部屋の方をチラチラと気にしていた。

柳田くんのこと気にしてるのかな…





「長時間車に乗って疲れたし、荷物置いたらとりあえず休憩しよ」

「うん!」


私達は荷物をベットルームの方に置いて、すぐ必要な物だけ出したあとリビングルームのソファーに腰掛けた。






「ソファーもふかふか♪」

「本当だ!」


私と春子は座っているソファーを押す。





「ソファーくらいのことで騒がないでよね」


はしゃぐ私達を見て、向かいの一人がけソファーに座る妃華ちゃんが呆れたように言った。





「あんたみたいなバカ金持ちにはわかんないんだよ!」

「なんですって~!?」

「まあまあ…」


キッと睨みあう春子と妃華ちゃんを、私は必死になだめる。


ソファーのことくらいで喧嘩しないでよ…

せっかくこんないいところに来たんだし…






「そういえば…凌哉くん達も落ち着いたかな?洋平…荷物散らかしてたりしてないといいけど」


険悪な2人を見て、話をそらしてこの空気を変える私。口調はたどたどしくてひたいには汗をかいていた。






「潔癖の凌哉がいるから大丈夫じゃない?溝口って人の事は知らないけど、圭吾も結構な潔癖症だしね…あの2人がいれば部屋が散らかることはないよ」

「柳田くんて潔癖症なの?」


春子が食いついた…!

やっぱり柳田くんのことが気になるんだ!





「元々はそこまでじゃないみたいだけど、凌哉の影響で潔癖症に目覚めたみたいよ?あいつの部屋もめちゃめちゃ綺麗だもん」

「そうなんだ~」

「…何?もしかしてあんた圭吾のこと好きなの?」

「えっ…!」


見透かしたような目つきで見てくる妃華ちゃんに、春子の顔は見る見る赤くなっていく。


唐突に問い詰めるように聞くのはかわいそうだけど、私もその質問が気になることもあり…かばうことが出来なかった。



ごめん春子!

私にもあんたの本音が聞きたいのっ

春子ってば全然教えてくれないし…







「…わかる?」


てっきり怒って否定するのかと思っていたけれど、春子は恥ずかしそうな顔をしながらそう言って私達から目をそらした。

こんな可愛い春子初めて見たかも!いつもは毒舌で顔に似合わずクールなのに。







「あっさり認めたし…なんかつまんないのぉ」

「うっさいわね!」



げしっ