オオカミくんと秘密のキス

げっ………!




弟達は不思議そうな顔をしていて、妃華ちゃんと溝口くんとは呆れ顔。春子と柳田くんは顔を赤くしていた。






ドンッ




「いてっ」


気がつくと私は凌哉くんを突き飛ばしていて、口にくわえていたチョコをはむっと口の中に押し込んだ。


今の一始終をみんなに見られてたなんて最悪!…超恥ずかしいよ…







「…邪魔すんなよ」


窓に寄りかかってブツブツと言う凌哉くんは、なんとも言えないくらい暗くてどよーんとした雰囲気が漂う。





どうしよう…

ここはフォローするべきだよね?でも何て言ったらいいんだろ…





「は…早くペンションに着くといいねっ」


とりあえず何か言わなきゃと思い、出てきた言葉がそれ。凌哉くんは私をじーっと見つめたまま、何も言わない。


フォローどころか、全然関係ないこと言っちゃった…

私のバカ…






「そうだな…」


ぶっきらぼうだけど、私の言葉に答えてくれた凌哉くん。

良かった…




「沙世」

「ん?」


ホッと一安心していると、凌哉くんが私の顔を覗き込んで来る。






「チョコついてる…」

「っ!」


そう言って私の唇に凌哉くんの指が触れ、下唇を指でゆっくりとなぞった。

それだけのことなのに…胸がすごくドキドキする……





「取れたよ」

「…あり…がと」


優しく微笑む凌哉くんに、私はボソッとお礼を言った。



たまに呆れる事とかあるけど……凌哉くんはいつもかっこいい。それに優しい…

さっきまでそっぽ向いていたとしても、すぐにまた凌哉くんを近くに感じられる…



凌哉くんてすごいな。

そんな凌哉くんが好きなのかなぁ…


それに気づいた自分がすごく恥ずかしいんですけど…






「やっぱり寝よ。向こう着いたら寝てられないと思うし」


今度は私の膝に寝転がる凌哉くんは、そう言って目をつぶった。





「着いたら起こして…」

「うん」


膝の上に誰かがいる状態は初めての私は、どういたらいいかわからないまま…とりあえず寝てしまった凌哉くんを見た。




きれいな顔…

こうやって見るとまつ毛長いな…










じーーー………





ハッ…!



寝ている凌哉くんに見とれていると、また前の席から視線を感じ顔を上げると、みんなが私をニヤニヤした顔で見ている。

私は顔を真っ赤にして、用もないのにスマホを眺めて誤魔化した。












「みんなお疲れ様ね~」


数時間後。

軽井沢のペンションの近くにバスが停車し、私達は荷物を持って外に出た。送ってくれた妃華ちゃんの知り合いの御夫婦に挨拶をする私達。






「おじさんとおばさんどうもありがとう!本当に助かっちゃった!!!」


妃華ちゃんは御夫婦に笑顔で言った。





「私達は近くの別荘にいるからいつでも頼ってね!帰りにまた迎えに来るから~」

「ありがとうございました!」


御夫婦を見送った私達は車が見えなくなったと同時に、妃華ちゃんを先頭にしてペンションに向かった。