オオカミくんと秘密のキス

すると、前の席に座っていた凌哉くんが私の側に来て、私が持っているチョコレートの箱に手を入れる。







「小川。圭吾が呼んでるぞ」

「え…」


チョコを口に入れながら、前の席に座っている柳田くんを指差す凌哉くん。





「ちょっと行ってくるね…」

「うん!」


少し頬を赤らめて席を立ち、春子は柳田くんの所へ行った。





「…なんて…別に圭吾は小川のこと呼んでねーけどな」


私の隣の席に座る凌哉くん。





「嘘なの?」

「うん。でも圭吾がさっきから小川と話したそうしてるから、俺が気利かせてやったんだよ」


本当だ…

春子は柳田くんの隣に座って楽しそに話してる。もしかして春子も話したかったのかな?





「私も気を利かしてここから消えるね~」


スッと立ち上がる妃華ちゃんは、弟達とそばの席に行ってしまった。





「あ…妃華ちゃんっ」

「いいから!私のことは気にしないでっ!」


引き止める私は、妃華ちゃんは面倒くさそうな顔をして追い払う。私は「ごめんね。ありがとう」と小声で言った。






「あーやっと沙世のとこ来れた…俺もずっと沙世と話したかったんだよね。圭吾の事言えねえな…」


そう言うと、凌哉くんはまたチョコを1つ口に入れると私の肩に寄りかかる。






「…眠いの?」

「まあまあ」

「寝ていいよ」


凌哉くんが近過ぎるくらい側に感じて、心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかってくらいドキドキする…






「んー…気が向いたらね」

「なにそれ…」


クスクス笑う私に、凌哉くんは寄りかかりながら私の持っているチョコレートの箱を指さした。







「くれ」

「……う、ん」


一言そう言うと、凌哉くんは「あー」と口を少し開ける。私はやや緊張しながはチョコを1つ手に取ると、凌哉くんの口の中に入れた。






「チョコ好きだね」

「…うまいなこれ」


もぐもぐと口を動かす凌哉くんを見て、私もチョコを1つ口に入れた。ミルクチョコレートの味が口の中に広がり、なんとも言えない幸せ感に包まれる。






「ついでに沙世のキスも欲しい」

「へ…?」


その言葉でチョコレートの味なんて無くなり、頭が真っ白になり顔は真っ赤だ。

凌哉くんはまたチョコを手に取ると、私の口にそっとくわえさせた。指についたチョコレートをペロッと舐める凌哉くんを見て、ドキッと胸が鳴る。







「食べさせて」

「っ!」


食べさせてって…

口移しでってこと…???






「…」

「早くしないと溶けるぞ…」


う…


凌哉くんの言うように、口にくわえているチョコは既に若干溶け始めている。






何この行為…

カップルってこんな事までするの?


これってキスなのか…それともチョコを食べさせようとしているところなのか…どっちなんだろう…



きっと凌哉くんは、チョコを使って私からキスをさせようとしてるんだよね。

自分からキスするよりも、小物を使って1個乗っかった方がいいのかな?

でも恥ずかしいことには変わりない!










じーーーー……




その時…ものすごく強い視線を感じて、凌哉くんの方に向けていた顔を上げると…みんなが全員こっちを見ていた。