オオカミくんと秘密のキス

ピンポーン…


おしゃれな造りのマンションに着き、凌哉くんが3階の真ん中の部屋のインターフォンを押す。





「よく遊びに来てるの?」

「んーたまにね。夏休みに入ってからは圭吾と何回か来たよ」

「ふーん…」


ってことは結構仲いいって事だよね…

柳田くん以外の凌哉くんが仲いい友達って、どんな人だろう…






ガチャ…




「…おう」

「よ」


玄関から出てきたのはウェーブかかったツーブロックの髪におしゃれな黒縁のメガネをかけた男の子で、とても大人っぽくてなかなかのイケメン。





「圭吾達来てるぞー」


部屋の中を親指を立てて、凌哉くんを見ながら後ろに向けて指さす溝口くん。



この人…なんかやる気ない話し方だなぁ…

ちょっと怖いかも。


凌哉くんの背中にやや隠れ気味に立ち、溝口くんの様子を伺う。






「これ。俺と沙世から」

「ん?ケーキか。おぉ!サンキュ♪」


凌哉くんからケーキを受け取ると、溝口くんは嬉しそうに笑った。



甘い物好きなのかな…?






「…っ!」


ジロジロと溝口くんを見ていると、ふと目が合ってしまい1人で焦っていると…





「沙世っぺありがと」


さ、沙世っぺ!?




「おい。その呼び方は俺だけなんだけど」


玄関に入って靴を脱ぐ凌哉くんが、溝口くんにそう言った。私は後ろでサンダルを脱ぎながら2人の会話を聞く。




「お前がいつも「沙世っぺ」とか言うから移ったんだよ。呼び捨てで呼ぶよりはいいだろ」

「まあな」


いつも…?ってことは…凌哉くんていつも私の話を友達としてるってこと?

やばい…顔ニヤケそ…






「沙世~」

「あ、春子!」


リビングに行くとソファーに春子と柳田くんがいて、私はすぐに2人に近づく。





「よ!萩原と会うの久しぶりだな」


少し日に焼けた様子の柳田くんが、ニコッと笑う。




「そうだよね!久しぶりだね~」

「この前の嵐の日は大変だったな…無事で本当に良かったよ」

「そうだよ~私マジで心配したんだからねっっっ」


あ…凌哉くんの誕生日の日の事だ…

私を探してくれてた時に、柳田くんと春子達にも連絡が行ったんだよね。





「心配かけてごめんねっ!」


こんなふうに心配してくれる友達がいるって幸せなことだな。

それに今度旅行にも行くし…凌哉くんと付き合ってからすごく充実してる気がするよ!






「ケーキ食べる人ー!?」


キッチンで小皿とフォークを持った溝口くんが、リビングにいる私達に笑顔で聞いた。私達は全員ほぼ同時に手を挙げた。










「…………で?旅行メンバーで集まって何話すんだ?もう行く先は決まってるんだし話すことなくね?」


みんながケーキを食べ始めると、凌哉くんがフォークを口にくわえながら私にゴロンと寄りかかる。

私は一気に固まり緊張しながらケーキを頬張る。





「持ち物とか集合時間とか決めといた方がいいよ。一応しおり作ったから見て見てよ」

「しおり!?修学旅行かよっ」


柳田くんがカバンからしおりを出して、私達に配り始めた。





「すごーい!これ作ったの!?」

「まあね。こういうの好きなんだ」


隣にいる春子に褒められて、デレっとしながら照れる柳田くん。





「本当にすごいね~こういうのあると助かるよ♪」

「…貸せ」

「あ、ちょっと!」


ペラペラとしおりを見ていたら、凌哉くんに横取りされる。





「自分の目の前にあるでしょっ」

「うるせ。お前がそっち見ろよ」

「もぉ…」


凌哉くんの前に置いてあるしおりに手を伸ばすと、そんな私達を見て溝口くんがぷっと吹きだした。