え…2人きり……?
顔を真っ赤にする私に対して、隣にいる凌哉くんはニヤニヤしていた。恥ずかしくなった私が目をそらすと、妃華ちゃんはうざそうにため息をついた。
「まあ、2人で行くには広すぎると思うから友達誘って行くのが無難じゃない?」
「そんなに広いの?」
「まあね。一応ペンションを2部屋押さえたし」
2部屋も!?
それは広いというか…多いというか…
「せいぜい楽しみなさいよね。じゃあ私は帰るから…響子ママによろしく」
「待って妃華ちゃん!」
キャリーバッグを引いて玄関から出ていこうとする妃華ちゃんを、私はとっさに引き止めた。妃華ちゃんはドアノブを掴みながら、手を止めた。
「良かったら…一緒に行かない?」
「…」
私がそう言うと妃華ちゃんの肩がピクッと動く。私は続けた…
「妃華ちゃんがくれたものなのに私達だけ行くってわけにいかないよ。それに元々は凌哉くんと行くつもりだったんだし…」
もう凌哉くんの幼馴染みに嫉妬したりなんかしない…
凌哉くんが妃華ちゃんと関わる度に、私に気を使うなんてこともなし。
私が間違ってたんだ。
妃華ちゃんを避けるんじゃなくて…これからは自分から積極的になるんだ…
「それに…私は妃華ちゃんとも旅行に行きたいんだよね」
今までの私からは考えられない言葉。
いつも春子以外の友達を避けて来た。自分は嫌われているからって、先に自分から遠ざけて関わらないようにしてた。
でもそれじゃダメなんだ…
ちゃんと話してもないのに、背を向けるのは負けだよ。
妃華ちゃんはゆっくりと振り向いて私の方を見ると、サングラスのフレームから涙がひとつこぼれた。
「…行きたい………」
そしてそのまま子供のように泣き始め、私と凌哉くんとなだめる。
その時に、妃華ちゃんのこと嫌いじゃないって思った。これからきっと好きになれる気がした…
なんだか嬉しくなった。
「送ってくれてありがとう。もう大丈夫だから」
あれから妃華ちゃんをなだめながら、私と凌哉くんは駅まで見送りに来た。元気を取り戻した妃華ちゃんは、駅の改札口で私達に笑顔で言う。
「気をつけてね!」
「おじさんとおばさんによろしくな」
「うん!2人共ありがとう」
妃華ちゃんはずれたサングラスを直すと、私と凌哉くんを見てニコッと笑った。
「旅行…楽しみにしてる♪」
そう言い残すと、妃華ちゃんは私達に背を向けて改札へと入り、一度もこっちを振り向くことはなく帰って行った。
「帰っちゃったね…………ん?」
凌哉くんに話しかけても返事がなく不思議に思って横を見ると、凌哉くんが私をニコニコしながら見つめている。
「…何?」
「いや…俺沙世に惚れ直したなと思ってさ」
「えっ」
急にそんなことを言われた私は、一瞬で顔が真っ赤になる。
「な、何言ってんの…」
突然なんなのよ。
しかも外だし、こんな人混みの中でさ…
「妃華の事…ありがとな」
凌哉くんに頭を撫でられる。なんだか飼い主に頭を撫でられた犬になった気分…
「ううん…それよりごめんなさい。今まで私が妃華ちゃんに嫉妬してたから、ずっとやりにくかったよね。もう大丈夫だから」
もう何でもかんでも嫉妬するのはよそう…
嫉妬しちゃったとしても、凌哉くんに話すのはやめよう。
「そんなことねえよ。気にすんな」
「うん…でも……スマン」
ペコっと頭を下げる私を見て、凌哉くんの顔つきが変わる。
「…………っ」
急に真剣な顔をしたと思ったら、凌哉くんはそのまま私にキスをしてきた。
「ちょっ…ここどこだと思ってのよっ」
駅前でしかも昼間だし、さっきから人が前からも後ろからも行き交ってるよ!
「しょうがないだろ。お前が可愛すぎるんだよ」
「も、もぅ…」
そんなこと言われたら言い返せなくなる。私ってチョロイ女だな…
「それよりさ…」
「ん?」
「旅行楽しみだな」
ニッと笑う凌哉くんに、私は恥ずかしがりながら「うん」と返事をした。
急遽決まった旅行。
今年は暑い夏になりそう…
顔を真っ赤にする私に対して、隣にいる凌哉くんはニヤニヤしていた。恥ずかしくなった私が目をそらすと、妃華ちゃんはうざそうにため息をついた。
「まあ、2人で行くには広すぎると思うから友達誘って行くのが無難じゃない?」
「そんなに広いの?」
「まあね。一応ペンションを2部屋押さえたし」
2部屋も!?
それは広いというか…多いというか…
「せいぜい楽しみなさいよね。じゃあ私は帰るから…響子ママによろしく」
「待って妃華ちゃん!」
キャリーバッグを引いて玄関から出ていこうとする妃華ちゃんを、私はとっさに引き止めた。妃華ちゃんはドアノブを掴みながら、手を止めた。
「良かったら…一緒に行かない?」
「…」
私がそう言うと妃華ちゃんの肩がピクッと動く。私は続けた…
「妃華ちゃんがくれたものなのに私達だけ行くってわけにいかないよ。それに元々は凌哉くんと行くつもりだったんだし…」
もう凌哉くんの幼馴染みに嫉妬したりなんかしない…
凌哉くんが妃華ちゃんと関わる度に、私に気を使うなんてこともなし。
私が間違ってたんだ。
妃華ちゃんを避けるんじゃなくて…これからは自分から積極的になるんだ…
「それに…私は妃華ちゃんとも旅行に行きたいんだよね」
今までの私からは考えられない言葉。
いつも春子以外の友達を避けて来た。自分は嫌われているからって、先に自分から遠ざけて関わらないようにしてた。
でもそれじゃダメなんだ…
ちゃんと話してもないのに、背を向けるのは負けだよ。
妃華ちゃんはゆっくりと振り向いて私の方を見ると、サングラスのフレームから涙がひとつこぼれた。
「…行きたい………」
そしてそのまま子供のように泣き始め、私と凌哉くんとなだめる。
その時に、妃華ちゃんのこと嫌いじゃないって思った。これからきっと好きになれる気がした…
なんだか嬉しくなった。
「送ってくれてありがとう。もう大丈夫だから」
あれから妃華ちゃんをなだめながら、私と凌哉くんは駅まで見送りに来た。元気を取り戻した妃華ちゃんは、駅の改札口で私達に笑顔で言う。
「気をつけてね!」
「おじさんとおばさんによろしくな」
「うん!2人共ありがとう」
妃華ちゃんはずれたサングラスを直すと、私と凌哉くんを見てニコッと笑った。
「旅行…楽しみにしてる♪」
そう言い残すと、妃華ちゃんは私達に背を向けて改札へと入り、一度もこっちを振り向くことはなく帰って行った。
「帰っちゃったね…………ん?」
凌哉くんに話しかけても返事がなく不思議に思って横を見ると、凌哉くんが私をニコニコしながら見つめている。
「…何?」
「いや…俺沙世に惚れ直したなと思ってさ」
「えっ」
急にそんなことを言われた私は、一瞬で顔が真っ赤になる。
「な、何言ってんの…」
突然なんなのよ。
しかも外だし、こんな人混みの中でさ…
「妃華の事…ありがとな」
凌哉くんに頭を撫でられる。なんだか飼い主に頭を撫でられた犬になった気分…
「ううん…それよりごめんなさい。今まで私が妃華ちゃんに嫉妬してたから、ずっとやりにくかったよね。もう大丈夫だから」
もう何でもかんでも嫉妬するのはよそう…
嫉妬しちゃったとしても、凌哉くんに話すのはやめよう。
「そんなことねえよ。気にすんな」
「うん…でも……スマン」
ペコっと頭を下げる私を見て、凌哉くんの顔つきが変わる。
「…………っ」
急に真剣な顔をしたと思ったら、凌哉くんはそのまま私にキスをしてきた。
「ちょっ…ここどこだと思ってのよっ」
駅前でしかも昼間だし、さっきから人が前からも後ろからも行き交ってるよ!
「しょうがないだろ。お前が可愛すぎるんだよ」
「も、もぅ…」
そんなこと言われたら言い返せなくなる。私ってチョロイ女だな…
「それよりさ…」
「ん?」
「旅行楽しみだな」
ニッと笑う凌哉くんに、私は恥ずかしがりながら「うん」と返事をした。
急遽決まった旅行。
今年は暑い夏になりそう…



