オオカミくんと秘密のキス

いやでもっ!

ここは勇気を出して………!!!






「あの…凌哉くん」


うちのアパートが見えてきた頃、腹を決めた私は凌哉くんに話しかけた。





「あの…あのね」


うぅ…


「目つぶって」って言いたいのに……言葉が出てこない。






「あ、あのっ…め……んっ」


突然唇が塞がる。

急過ぎて目をつぶれなかった…



遠足の時に凌哉くんからキスされたみたいだな…

あの時も…突然ですごくびっくりした…







「…」

「…」


唇がそっと離れると、凌哉くんとお互いに真っ直ぐ見つめ合う。






「…これで勘弁してやる」


凌哉くんは優しい顔をして笑うと、私の頭を撫でて言った。

数時間ぶりに見た気がした凌哉くんの笑顔に、胸が高鳴った。









「気をつけてね」


私を家に送ってくれた凌哉くんは、隆也くんを連れてすぐに帰ることに。私と洋平は玄関先で2人を見送る。






「今日はありがとね」

「礼を言うのはこっちだよ。プレゼントとか…その他諸々ありがと」


今日は長い1日だったな…

だけど最終的にはいい日になったよ。






「俺らには??」


洋平が心配そうに言うと、凌哉くんは笑いながら弟達の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。





「お前らもありがとな」


隆也くんも洋平もすごく嬉しそうだ。





「あら」


するとちょうどお母さんが帰ってきて、玄関で凌哉くん達と顔を合わせた。





「こんばんは」

「こんばんは♪今日誕生日だったんですって?おめでとう~もしかして紗世と洋平のこと送ってくれたの?いつもすいませんねぇ」


仕事帰りとは思えない程のお母さんのテンションの高さ。

残業とか言ってたけど、この様子じゃ帰りに居酒屋で一杯ひっかけてるな…






「あ、そーだこれ!私からの誕生日プレゼントよーん」

「え…」


お母さんは凌哉くんに、手のひらサイズのラッピングされた物を差し出した。




「気を使わせちゃってすいません…」

「いいのいいの!開けてみて」

「はい」


凌哉くんは早速プレゼントのラッピングを剥がす。


お母さん…わざわざプレゼント用意しててくれたんだ。

私からしても、プレゼントの中身がすごく気になるんですけど…







「これって…」







げ!





プレゼントの中身は「高校生からの性教育」という教材本だった。

それを手にしている凌哉くんは、すごく困ったようにお母さんを見つめる。





「いやさぁ、そういうのってやっぱり大事かなーと思って~なーんてウソウソ!これはギャグよ♪」

「ちょっと!お母さんっっっ!!!」


もう夜も遅いというのに、そんなことよりも怒りの方が強くて私はとっさに大声をあげていた。






何はともあれ…

凌哉くん。お誕生日おめでとう!