オオカミくんと秘密のキス

「帰りのHRやるぞー」


担任が教卓に立ちHRが始まると、私と春子は先生の方に目を向けた。私は後ろを気にしないようにしながらカバンに荷物をつめる。




「あ!今週の放課後って図書委員の当番じゃなかった?」


思い出したように言う春子に、私も「あ!」と委員会のことを忘れていたことに気が付いた。




「そうだった!私達図書委員だったね」

「最悪。帰りに沙世に買い物付き合って欲しかったのに~図書委員て何時までやるんだっけ?」

「確か4時だったかな」

「うげー」


春子のテンションは下がる一方。もちろん私もだ。


委員会終わってからスーパー行って帰っても大丈夫かな?

弟は多分学校終わったらすぐ遊びに行って家にはいないと思うし…ま、一応いつもよりも遅くなることLINEしとけばいいか。




キーンコーン
カーンコーン


「気をつけて帰れよー」


HRが終わると、私は自分の席でジャージから制服に着替えていた。





「凌哉(りょうや)、帰ろうぜ」

「んー…」


尾神くんと柳田くんが、私と春子の席の間を通って教室から出ていく。



今柳田くんが言ってたってことは、凌哉って…尾神くんのことだよね?

尾神くんの下の名前『凌哉』っていうんだ…初めて知った。

かっこいい名前…





「図書室行こう」

「あ、うん!」


着替えを済ませた私と春子は、カバンを持って図書室に向かう。

放課後の図書室は意外と生徒がいて、勉強をする人や友達とただ喋っている人…純粋に本を借りに来る人も少なくはない。

私と春子は図書室のカウンターに入り、足元にカバンを置いて椅子に座った。



図書委員の仕事といっても、本を借りに来る人がいない限りは暇である。

仕事といえば、本を借りに来た人の対応と返却された本を元に戻す。そして4時になったら戸締りをするということだ。

本だけではなく多少の雑誌や漫画などもあるので、それを盗む人がいないかの監視役なんじゃないかとも思っている。




「ギャハハ」

「ウケるんだけど」


図書室のテーブルと椅子に座って、バカ話をしながら大声で話す男女。



うるさいなぁ…

入り口の『図書室は静かに』っていう大きな貼り紙見えないのか?

ま、しーんとし過ぎても春子と話しづらいし大目に見るか。


早く4時にならないかな…

今日はお母さん仕事で遅くなるから、早く帰ってご飯の支度しなきゃだし…





「うちの学校の図書室もカード式じゃなくてパソコンにすればいいのにね~」


春子はスマホを見ながら口を尖らせて言う。




「確かにね。パソコンなら図書委員の仕事も減るし」

「だよね~ってゆうか図書委員自体いらないかもよ~」


本の匂いに包まれながら春子と話しているとあっという間に時間は過ぎ、気がつくとあと10分で16時になる時間。