オオカミくんと秘密のキス

凌哉くんは一言そう言うと、そのスニーカーをじーっと眺めていた。




「あんたねぇ…毎年そうだけど、プレゼントもらった時くらいもっと喜んだら?ちっちゃいときからリアクション薄かったわよね」


もう~と口を尖らせる響子さん。




確かに凌哉くんのリアクション薄いな。それに今日はなんだかずっと無表情だし…

いつもは喜怒哀楽激しいけど…今日は私が心配かけちゃったっていうのもあって、テンションが上がらないとか?それともお母さんの前だからかな?






「これは俺と隆也から!いつも凌哉兄ちゃんにはお世話になってるからな!」


洋平と隆也くんは、凌哉くんに消しゴムとシャーペンの芯を差し出した。





「…ハハハありがとな」


私はその光景を微笑ましく見ていた。響子さんもウフフと笑っている。






「…っ!」


すると凌哉くんはクルッとこっちに目を向けると、じーっと見つめてきた。




う…

響子さんも弟達もプレゼント渡したし…最後は私だけってことだよね…


てゆうか、ここで渡すの?

なんか…みんなから注目されてて緊張するな…





「あの…えっと…ちょっとお待ちを!」


私は一旦廊下に出てプレゼントの箱を置いたあと、またリビングに戻り後ろに紙袋を隠しながら響子さんに近づいた。

とりあえず響子さんに手土産を渡して…凌哉くんには後で渡せばいいよね…






「あの!これ…つまらないものですけど……」

「え?」


シワシワになった紙袋を差し出すと、響子さんは一瞬キョトンとしてすぐにクスッと笑う。






「すみません!雨でこんなふうになっちゃいましたけど…中身は大丈夫だと思いますので…」

「ふふふ、どうもありがとう。わざわざすみませんね」

「いえ…」


このタイミングで手土産って…普通
最初に渡すべきだった…びしょ濡れでシャワー浴びてたからうっかり忘れてたよ。






「あら♪これ…あのケーキ屋のクッキーじゃない。私これ大好きなのよ」

「本当ですか?良かった」


喜んでもらえたみたいだな…ホッとした…







「紗世…」




へ…?





無表情で立ち上がる凌哉くんは、私の名前を呼んでリビングから出ていく。





もしかして…

ついて来いってこと…?





「…ちょっと行ってきます」

「ごゆっくり~」


私は響子さんに頭を下げ小走りで後を追いかけ廊下に出ると、凌哉くんは階段に足をかけていた。







「俺の部屋行くぞ」

「あ、うん」


私は廊下に置いていたプレゼントの箱を持ち、凌哉くんの後について行った。

凌哉くんの背中を眺めながら2階へ上がり、突き当りの一番奥の部屋の前まで来た私達。




さっき服を借りた時に来たけど…

凌哉くんの部屋に入るの初めて…


ちょっとドキドキするな…