オオカミくんと秘密のキス

店員さんが箱に入ったそのホールケーキは、ビターチョコのケーキでマカロンや金粉などでかわいくデコレーションされている。大人っぽくもあるのに、どこかかわいらしいケーキだった。





「可愛いですね!」

「ありがとうございます。今お包みしますが…お持ち歩き時間はどれくらいでしょうか?」

「あ、えっと…だいたい1時間くらいです」


ここから凌哉くんの家まで歩いて…まあ、30分以上1時間以内で着くはず。






「かしこまりました。では、少々お待ちくださいませ」

「あの!あと…あのクッキーの詰め合わせも頂きたいんですが…」


私はさっき目に止まった、かわいいクッキーの詰め合わせを買った。

これで、凌哉くんの家に持っていく手土産もバッチリだ!






「ありがとうございます。お気をつけてお持ちくださいね」

「はい!どうもです」


ケーキとクッキーを包んでくれた店員さんから、紙袋を受け取った時だった…






ゴロゴロゴロゴロ…

ドーン…!




「きゃ!」


突然大きな音がして私と店員さんは、店内から外を見つめる。

さっきまで良い天気だったのに、外は真っ暗になっていて今にも雨が降りそうな空になっていた…





「嘘…」


傘なんて持ってきてないよ…

今朝の天気予報で天気崩れるなんて言ってたかな?





「良かったら傘をお貸ししましょうか?」

「え?」


店員さんはそう言ってニコッと笑った。




「え、でも…」

「遠慮しないで下さい。ちょっと待っててくださいね」


そう言うと、店員さんは走ってバックヤードに入って行き、ビニール傘をもってまたすぐに出てきた。





「これ使って下さい!」

「いいんですか?…すいません……ありがとうございます」


何度も頭を下げる私を見て、店員さんはクスッと笑った。






「素敵なお誕生日にしてくださいね」


その言葉に私は照れながら笑い「必ず傘を返しに来ます」と言って、店員さんに挨拶をして店を出た。






ゴロゴロゴロゴロゴロ…



ケーキ屋を出て上を見上げると、空は真っ黒な雲がかかっていてとても荒れている。

誰が見ても一雨来るのがわかる…





急ごう。

雨でケーキやプレゼントが濡れたら大変だもん…





ピカッ



ドーーーーン…!!!!











「ひっ…………」


凌哉くんちに向かって走り出そうとした直後…空が光り大きな雷の音がした。







ポタ…

ポタポタポタポタ…


ザーーーーー………




おまけに雨まで降り始める。しかも大粒で横殴りの雨…







最悪…


私は借りた傘を急いでさして、ケーキやプレゼントが雨で濡れないように内側に抱えた。


地面のコンクリートはあっという間に濡れて、足元はすでにびしょびしょ。

傘にはバラバラバラっと雨が当たる大きな音がして、風もかなり強くまるで嵐だ。





この季節は天気が変わりやすくて困るな…

しかも大事な日にこんな雨が降るなんて、本当についてないよ…



でも仕方ない。

みんなが待ってるし行かなきゃね!




凌哉くんに会えると思うと元気が溢れてきて、こんな嵐なんてことないし前向きになれる…






ピカッ


ドーン………!!!