色恋 〜Colorful Loves〜

いたたまれなくなって、私は立ち去ろうと荷物を持ち直した。



でも、長谷川くんは、すぐに笑顔に戻って、





「あっ、そうか、名札を見てくださったんですね!」





と自分の胸を指差した。




私は気まずい思いをこらえて頷き、





「なんかすいません、勝手に………」





と、しどろもどろに謝った。





「えっ? なんで謝るんですか?

俺、嬉しいですよ。

お客さまに名前知ってもらえるとか、すごく店員冥利に尽きるっていうか……」





「………そうですか?」





「そりゃそうですよ。

がんばって働いてる甲斐があるなー、なんて。

ありがとうございます」





長谷川くんの笑顔があまりにも屈託なくて、私はどう返せばいいか分からなくなってしまった。