いつだって、ヒーロー。




私の頭の中には北原くんの言葉だけが、ずーっとループしていた。


そんな男って…まさか、伊藤先輩のこと?


北原くんは何を知ってるの?


「………ちゃん?」


危ないってなに…?


「…くらちゃん?」


誰も助けに来ない…?
私、何かしちゃった…?


「永倉ちゃん!」


ハッと我に返ったときには伊藤先輩が心配そうに顔を覗いていた。


「大丈夫?ぼーっとしてたけど」


「あ…は、はい。大丈夫…です…」


きっと何回も名前を呼んだのかな?
不思議そうに私の様子をうかがう。


「歩き疲れたのかな?どっかで休憩しよっか」


ごめんなさい伊藤先輩…。

ぼーっとしちゃってた…。

私たちはまたひと気のない、屋台が出てるところとは離れた場所に移動した。


「ご…ごめんなさい…」


先輩が自動販売機で買ってくれたジュースを飲んで落ち着く。


本当に何やってるんだろう…。
せっかくの夏祭りなのに…。


「いーよ。ずっと歩いたしなあ」


石段に座ると、んーっと伸びをする。
ふあ〜ってあくびをする先輩を見て思い出す。


「せ…先輩、今日…部活でしたか?」


「正解。なーんでわかったの?」


やっぱり…。

サッカー部ってきっと大変だよね。
練習で疲れてるはずなのに…。


「あくび…!してたので…」


きっと眠たいですよね?
本当はお家に帰ってお風呂に入って寝たいんじゃ…。









「じゃあ永倉ちゃんが癒してよ」









「へ?」


私がマヌケな返事をしたときには、10cmくらいの距離に伊藤先輩の顔が。


ドクン………


「………っ」


伊藤先輩……?


「今日来てくれたのって、こういうの大丈夫ってことだろ?」


ちが……う…。

顔にかかる伊藤先輩の吐息が変な感じがして、胸がザラザラする。



"そんな男といたら危ないよ"



北原くんの言葉。

こういう意味だったんだ…。


「俺が普通の男だと思った?騙された?」


「や…やめてくださいっ…!」


伊藤先輩の体を力いっぱい押すけどビクともしない。

やだ…怖い……。


「俺だって男だよ?永倉ちゃんみたいな小さい子に押し倒されるほど弱くねえよ」


手を絡めてくる伊藤先輩。

震える私の手をさらに強く握ってくる。


誰か…。


もう、私って本当に……………バカだ。


北原くんのことだってあったのに、なんでまた…こうなるんだろう…。


ふっと口角を上げて少しずつ近づいてくる顔。



もうすぐ私たちの距離は0にー……。