いつもなら湊と乗る電車を今年は1人で乗る。
浴衣で1人って恥ずかしいな〜…。
ソワソワしながら電車に揺られて目的地に着く。
夏祭りはたくさんの人が来ていて混雑してる。
ちゃんと見つけられるかな?
改札を出てキョロキョロあたりを見渡すけど、伊藤先輩の姿が見えない…。
ど、どこ?
周りにはたくさんのカップル。
そんな中で私一人ぼっち…。
探さなきゃ!
「なーがくーらちゃんっ」
「ひゃあっ!」
後ろから急にぽんっと肩を叩かれた。
ビクッと肩をすくめながら振り返ると…
「い…伊藤先輩…!」
伊藤先輩だ。
あ…浴衣じゃない…。
でもTシャツにジーパンっていう、すごくラフな格好がすごく似合ってる。
「やばい…。本当に浴衣で来てくれたんだ?」
「はいっ…!」
夏の7時。
やっと暗くなった頃。
伊藤先輩の顔が暗くて、ハッキリと見えない。
「すっげー可愛い」
それでよかった。
私の火照った顔を見られなくて済むから。
「あ…ま、毎年…ここには浴衣で来てるんですっ…!」
「そーなんだ。じゃ、行こっか」
並んでゆっくり歩く。
カランカランという下駄の音は周りの楽しそうな声にかき消される。
何を話そう…。
緊張して何も思い浮かばないよ…!
「なに食べたい?」
気を利かせて伊藤先輩が聞いてくれた。
「あ…えと…ゲソ!ゲソ食べたいです!」
「ぶっ!永倉ちゃんおっさんぽいね?いいよ、探そうか」
わ、笑われちゃった。
しばらく歩いてイカ焼きを売ってる屋台を見つけて、ゲソを買った。
「ん〜っ!おいしい!」
やっぱりイカはゲソだ!
「美味しそうに食べるな〜」
そう笑う伊藤先輩が持ってるものは…
りんご飴。
すごく可愛いもの食べるんだなあ。
私とは真逆だよ。

