「出るかな」
お家に帰ってケータイの電話帳を開く。
『もしもし?』
相手は真緒ちゃん。
「あのね…。伊藤先輩に夏祭り誘われちゃったんだけど、どうしたらいいのかな…」
湊とコンビニに行って、すっかり返信を忘れてた。
自分だけじゃ考えられなくて、真緒ちゃんに電話しちゃった。
『意外と積極的だね〜。本当にチャラ男だと思ってたけどそうでもなさそうだね?』
「そ、そうだけど…」
『泉は?行きたくないならハッキリ断った方がいいよ。無理に行く必要はないんだから』
無理に………。
『ねえ泉?』
「ん?」
『こんなこと聞いたらたくさん悩んじゃうかもだけど…。泉は宮城のこと忘れようと思ってる?』
「あ、青くんを…?」
忘れるって?
記憶から青くんの存在を消すこと?
「どういうこと…?」
『だから、付き合ってたときの気持ちを消そうと思う?』
「そんな…!もう…消えてるよ」
付き合ってたときの気持ち…
好き
って気持ちだよね?
ねえ真緒ちゃん、そんなのもうとっくに消えてるよ?
『じゃあなんでいつも目で追うの?忘れられないから追っちゃうんじゃないの?』
そんなこと……言わないで…。
「真緒ちゃん、私が見ちゃうのは罪悪感からなの…。好きなんてもうとっくになくなったよ?」
そう、好きだから見ちゃうんじゃない。
突然別れを告げてしまった罪悪感。
『じゃあさ…進んでみようよ。もう宮城を好きじゃないなら、一歩踏み出そう?別にね伊藤先輩と夏祭りに行けって言ってないよ?それも道なんじゃないかな…?』
踏み出す……。
そっか、私まだ踏み出してないんだ…。
忘れたようで忘れてない。
消えたようで消えてない。

