「……ねぇ、お母さん」
「どうしたの?」
お風呂上り後、あたしは夜の天気予報を見ながら聞いてみた。
今お風呂には、お父さんがはいっている。
「早乙女くんの家ってさ…何か訳ありなの?」
「いきなりねぇ。
…お母さんは、何も聞いたことないけど?」
「お母さんは、早乙女くんのお母さんに会ったことあるの?
一子さんって名前なんだけど」
「ああ…一子さんね。
黒髪で眼鏡をかけている、美人な方でしょう?
彼女が挨拶に来たのよ」
「…へぇ」
一子さんが、早乙女くんのお母さん。
一子だから、早乙女くんは、二瑚。
じゃあ、あの女性は誰…?
あの全身真っ赤に決めた、派手な感じの人は。
早乙女くんのお姉さん?
…姉が弟を“くん”付けするか?
する場合もあるのかもしれないけど…。
じゃあ何で早乙女くんは、一子さんを“母さん”と呼んだのに、あの女性を“姉さん”と呼ばなかったのだろうか?
もしかしたら、お姉さんじゃないの?
あの女性は誰?
聞いちゃマズいかな?
でも家庭環境なんて、他人が聞いて良いことじゃないよね?
お母さんでさえも知らないんだから…。
あたしがもし彼女なら聞けたけど……。
彼女、かぁ…。
早乙女くんって、本当に謎が多い人だな……。
「幸来、明日も学校でしょ?
早く寝なさい」
「わかった……」
あたしは自室へ向かって行った。


