しかし、エントランス内には誰もいない。
いるのは、あの男の子だけ。
…嫌な予感しか、しないんだけど……。
「…早乙女くん?」
彼を見ながら聞いてみると、彼はふっと笑った。
イケメンな顔に、やっぱり笑顔は似合う。
「そうですけど?
僕に何か、ご用ですか?」
コイツか……。
早乙女くんって言うのは。
「初めまして。
あたし、お隣の上野幸来(うえの・さら)。
早乙女くんと同じ高校みたいなの、よろしくね?」
「…サラ?」
え?いきなり呼び捨て?
「…そうですか。
僕、初めて見ました、上野さんのこと。
上野さん以上の馬鹿を、見たことがありません」
……はい?


