早乙女くんは営業スマイルを浮かべた。
見分けることが出来るなんて……。
出会ってまだ1日も経っていないのに。
あたしの能力が、恐ろしい。
「初めまして。
早乙女二瑚と言います」
「あら、早乙女くん?」
「はい。
今朝は幸来先輩に送っていただき、ありがとうございました」
幸来先輩?
…そっか、お父さんもお母さんも、上野だもんね。
上野先輩って言ったら、わからないもんね。
下の名前で呼ばれたの、初めて…。
早乙女くん、いつも“お前”とか“アンタ”とかだもんね。
…そう考えると、早乙女くんのあたしへの扱い、酷くない?
「良いのよ別に。
気にしないでちょうだいね?
これからも、一緒に通っても良いのよ?」
お母さ~ん!
一緒に通うことになっても良いけど、近所だから。
また自転車の後ろに乗せるのは、困るんだよ~!


