「そ~いえば俺、アンタに聞きたいことあるんだよねー」

「先輩って言わないの?」

「言うわけないじゃん。
何で俺より馬鹿なアンタを、先輩呼ばわりしないといけないわけ?
先輩って言ってほしかったら、馬鹿を治すんだな」




言うこと言うこと、1つ1つに凄くムカつく。

頭から湯気が出そうなぐらい、あたしはイラついていた。





「あの人誰?」

「あの人って?」





鸚鵡(おうむ)のように返すと、グイッと腕を引っ張られた。

目の前には、「神様の意地悪!」と叫びそうになるほど、整った早乙女くんの顔があった。





「さおっ…!?」

「アイツだよ、久遠って奴」



その瞬間、あたしは早乙女くんから離れていた。




「久遠先輩のこと、呼び捨てにしないで!」

「は?」

「久遠先輩は、呼び捨てにされるような人じゃない!」

「何?
アンタ、アイツのことが好きなの?」




鼻で笑った早乙女くんに向かい、あたしは叫んだ。





「好きだよ!
あたしは久遠先輩のことが好きだよ!
早乙女くんには関係ないでしょ!?」





恥ずかしさなんて、この時なかった。

でもずっと、思い続けていた気持ち。

あたしはずっと、久遠先輩が好きなんだ。