「いやああああっ!」
遠くから、子どもの泣き叫ぶ声が聞こえた。
声の方向を見ると、小さな少女が泣いていた。
「あの子は…?」
俺の独り言を、オバサンは聞いていて、教えてくれた。
「あの子、店長さんの1人娘さんよ。
早くに奥さん亡くされて、男手ひとつで育ててきたらしいわ。
可哀想にね、あの子も……」
親戚らしき人に囲まれながら泣き叫ぶ少女を見て、俺は思わずしゃがみこんだ。
オバサンを始めとした野次馬が、俺を心配して声をかけてくれた。
でも俺には、何も聞こえなかった。
聞こえるのは、悲痛な少女の泣き叫ぶ声。
「…あっ……あっ………ああああ…………」
俺は頭を押さえながら、意味のない言葉を繰り返していた。
俺のせいだ。
俺のせいで、あの子の人生を狂わせたんだ。
俺が、万引きなんてしなければ。
「うわあああああああっ!!!!」
俺はその場に倒れこんだ。


