「断る。
だって万引きは犯罪だろ」
「確かにそうよ」
「犯罪者には、なりたくない」
「……じゃあ、出て行きなさいよ」
「はっ!?」
「万引きできないのなら出て行きなさい。
またアタシに出会った頃の孤独な二瑚に戻りなさい?」
サラに出会った頃の……俺に………。
『…何見ているんだよ、ガキが』
『そうよ。出て行きなさい』
『てかお前、本当に一子さんの子なのか?』
『アハハ、似ていないわねぇ~』
『アンタなんて、イラネェ子なんだよ』
『お父さんもお母さんも、二瑚くんのことなんてど~でも良いと思っているのよ』
『可哀想だなァお前は』
頭の中に響く、下品な笑い声。
フラッシュバックして現れるのは、目の前で洋服も着ないで体を重ね合う知らない男と母さんの姿。
何度も何度も唇を重ねる、知らない女と父さんの姿。
何も言わず、ジッと見ていると、知らない人に殴られた。
見ているんじゃねぇよ!って、叫ばれた。
また、1人になる?
また、夜の街を出歩く?
また、
誰にも愛されない?


