牛乳は買い終えたけど、あたしはおにぎり売り場に向かった。

買うわけじゃない。

ただ、気になるだけ……。





「そういえばあの少年、どうなりました?」

「家族で夜逃げしたんですよ」

「夜逃げ、ですか」

「あの家、変わっていましたから。
少年が逮捕されて親に連絡したんですけど、出たのが父親の愛人だったんですよ。
父親のことを聞いたら、パチンコに行っているとか言いだしましてね」

「母親の方は……」

「愛人の友人だったみたいで、連絡を取ってもらいました。
そうしたらその母親も、ラブホで愛人と一緒にいたんですよ。
息子さんが万引きで捕まったことを言ったら、さほど慌てた様子もなくて。

どうやら前々から息子さんの万引きには気が付いていたみたいなんです。
でも、関係ないからって放っておいたみたいで」





遅刻しちゃう。

早乙女くん待たせているんだから、早くしないと。

…そう思うのに。

警察の人が話す会話を、最後まで聞きたいと思ってしまう。






「放っておいた?
…本当、何なんですかその家は」

「しかも少年の父親、数か月前に強姦で逮捕されたことがあるんですよ。
その時も連絡したんですけど、出たのが母親の愛人で。
近所でも評判の悪い家だったみたいですよ」

「少年の家はその後夜逃げですか……」

「ええ」

「そういえば、初犯じゃなかったんでしょう?
何故少年院などに送らなかったんです?」

「その少年、親からお金をもらっていなかったんです。
食費さえも。
少年は生きるために、万引きをしたんです。
盗まれたものも、オモチャやゲームなどではなく、食品でしたから」





そこまで聞いていると、ポンッと肩を叩かれた。

ふと見ると、早乙女くんが立っていた。