「お人よしだなぁ、幸来は」
「だって…初恋だったから、久遠先輩が」
あたしはその場で泣いた。
ポンポンと早乙女くんが優しくあたしの頭を叩いた。
「ところで早乙女くん、良いこと言ったね」
「……別に」
早乙女くんはスタスタと学校へ向かって行く。
「待って!
あたしまだ、牛乳買っていないから!」
「はぁ?
相変わらず忘れっぽいドジだなぁ幸来は」
「相変わらずって何よ!」
あたしは再びコンビニへ入る。
早乙女くんは外で待っていてくれるみたい。
早く買わないと。
中には警察がいた。
お店の人に事情聴取しているみたい。
邪魔しないよう、あたしは牛乳を掴み、ちゃんとお会計をした。
「そういえば、前にもありましたよね。
高校1年生の少年による万引き事件」
「あーありましたね。
隣町でのことでしたよね」
「少年の家庭もかなり複雑でね。
確か今の時代なのに、妾がいるとか……」
何てことのない、警察同士の会話。
普通に聞き流しているだけだった。
“妾”
その言葉を聞くまでは……。


