「ただいまー!」
「あっ! お姉ちゃん! 遅いよ〜」
「ごめんね、友理。」
私の妹の、友理。
モテるのかな?
武くんといたのって、もしかして…友理?
「ねぇ、友理。 武って人と、知り合いなの?」
「え? 武さんのこと? 知り合いだよ? なんで?」
「いや、どんな関係なのかなって…」
なんか、苦しい言い訳。
「別に… ただの知り合いだけど? 武さんは、彼女いるらしいし、関係ないよ。」
友理、なんか、暗いな。
「そうなんだ? 友理は、武くんが、好きなの?」
「なっ…なんでっ!?」
なんでって言われても…
「なんとなく、だけど…」
「お姉ちゃんは、誤魔化せないね。 そうだよ、あたし、武さんが好き。 武さんは、知ってるんだ…。 あたしさ、抑えたりできない性格でしょ? だから、武さんに言うのもはやかったんだけどね、武さんは、真剣に聞いてくれた。 それで…その…き、キス…してくれたん、だよね…。 だから、武さんはきっと、彼女と別れてくれるよ。 だって、武さん、言ってたもん。」
えっ!?
キス、したの?
武くん、軽い人なんだ…
でも、それより、
「な、なんて…?」
「『リコは最近冷たい、俺だけが好きなのかな。 それなら、リユウちゃんがいいや。』って。 だから、てっきりあたし、お姉ちゃんと付き合ってるんだって思って…。 『お姉ちゃんの代わりなんて、嫌です。』って言ったの。 武さん、すごくびっくりしてたよ。 お姉ちゃん、武さんと付き合ってるの?」
あぁ…この子は、とんでもない勘違いをしている。
"リコ"は、梨湖であって、私じゃない。
気付かないのも無理はないけど…
リユウって名前にしてるんだね、友理。
えらいな…。
「武くんと付き合ってるの、私じゃないの。 同じクラスにね、梨湖っていう子が居て、その子と、なの。」
言っちゃ、ダメだったかな?
「そう、なんだ? お姉ちゃんの友達でしょ? お姉ちゃんは、無口でも、分かり易いね。 わかったよ、武さんとは、たまにしか会わない。 でも、会っても、いいよね? あたしも、好きだから。」
いいよね?
梨湖。
「うん、いいと思う。 梨湖には、黙ってたほうがいいよね?」
「ううん。 あたし、直接リコさんに言ってくる。 武さんが好きなら、わかってくれるよ。 そうだよね?」
「うん。 きっと…」
私は、その夜梨湖にメールを打った。
《梨湖。 私の妹が、明日会いたいって言ってるの。 明日、大丈夫かな? 武くんのことだって。》
返信がきたのは、それから10分後。
《わかった。 会う。 明日の5時にあそこの喫茶店って言ってて。》
《りょうかい。》