「騎士さま!昨日はありがとうね。おかげで魔物に襲われずにすんだよ」

「いえ。それが私の仕事ですから。私には、そんな事しかできないので」

「そんなことないよ。でも、昨日のケガはどうだい?怪我してただろう?」

「大丈夫です。ありがとうございます」




ユキは道行く人とそんな会話を交わしながら歩いていく。





「ユキ・・・」





その様子を見て、レオたちは立ち尽くす。
知らなかった。
ユキがこんなことをしていたなんて。


自分たちのために、あんな風に頭を下げて。



頬にケガをして帰ってきていたことがあった。
引っ掻いたのだと、言っていたユキの言葉を疑わなかった。





「毎日ああして街の中を歩いて話をしているんです。ああして何度も謝って頭を下げて」

「・・・」

「あの一件から、魔物の襲撃が増えたんです」

「なに?」

「そのことを話すと、街を見回ってもくれるようになって、魔物から私たちを護ってくれています。自分の身体を犠牲にして・・・」







「そんなユキさまを見て、みんなの心が変わり始めています。自分が傷つくのを厭わず、身を挺して守ってもらって・・・。私たちは、本当にユキさまに、そしてユキさまがお慕いしているレオさまに感謝しているんです」




シュリが、ユキの後姿を見つめながら語る。
その想いを聞いて、レオはじっとしてなどいられなかった。