「え、結局血がいるの?」
「ほんの少しの血でいいんだよ」
「うう・・・」
痛いのは嫌いだ。
剣道をしていておかしいと思うかもしれないけど。
言ってしまえば、痛いのが嫌いだからここまで強くなったと言っても過言ではない。
勝てば痛い思いをせずに済むから。
痛い思いをせずにすむ方法を考えた結果が勝つことだった。
だから、今でも痛いことは苦手だ。
「ユキ、手だして」
「え・・・」
フランが私の右手を取る。
その動作に、思わずどきっとしてしまう。
「おい、なに顔赤らめてんだよ。男同士で気持ちわり―な」
「え、いや!赤らめてなんてねぇよ!バカじゃないのか!」
隣でノアがからかうように言う。
私は慌ててごまかした。
危ない危ない。
チクッ。
その瞬間、小さな痛みがしたかと思ったらすぐにその痛みが消えた。


