「きゃあ!ひったくりよぉ!!!」
突然女の人の悲鳴が上がり、辺りが騒然とする。
振り向けば、少し年配の女性が倒れこんでいるのが見えた。
「フラン、行って」
「え、でも・・・」
「大丈夫だから」
戸惑っているフランを後押しして送り出す。
フランは小さく頷いて逃げて行ったひったくり犯を追いかけた。
女の人は近くにいた人が助け起こしている。
私はフランの足手まといにならないようここでじっとしてなくちゃ。
まだ完ぺきに歩けないこの足。
本当に歩けるようになるのかな。
イルム先生は毒が抜けきるのはまだ時間がかかると言われた。
動けるようになって、話せるようにもなったけど、それでも、毒の影響は残っているらしい。
今はあまり無理をしてはいけないのだと念を押されたことを思いだす。
だから今日のこの遠出も、ほんの数十分だけと言われた。
フランが戻ってきたらもう戻らないといけない。
だから、できるだけ街の様子を見ておきたい。
少しなら・・・。
少ししたらここに戻ってくるからいいよね?