ユキが眠るのを見届け、レオはイルム医師と一緒に部屋を出た。
城内の医師は王の手がかかっているため信用できず城外の信頼のおけるイルム医師を呼んでいたのだ。




「王子さま、先ほどはああ言いましたが、ユキさんの声は毒によるものではないと思われます」

「・・・なに?ならば、なぜ」




すぐに呼べるよう、イルム医師には塔の一室を寝泊りする場所として明け渡した。
その塔にはいると神妙な面持ちでイルム医師は話し出した。



「おそらく、心因性のショックによるものだと思います」

「心因性・・・」

「あの毒は、ゆっくりゆっくり死が近づくのを感じながら、身体を蝕まれていく毒性は低いが、心も体も殺していく恐ろしい毒なんです」




訳も分からず死んでいくのとは違う、着実に近づいてくる死を感じながら。
自分の命の終わりを感じながら―――――。


どれほどの恐怖だろう。
どれほどの絶望だろう。




「ユキさんには、かなり強いストレスがかかっているはずです」




レオは強く拳を握りしめた。
毒に体を侵されただけでなく、心までも―――――。


レオの苦しさは、尋常ではなかった。