◇◇◇ 次の日、今日は誰も来ていなかった。 ただ、そこには霞でも鬼囮爺でもない人物がいた。 鏡花に背を向ける形でその人物は立っている。 鏡花はあまりに見覚えのある姿に目を見開き、言葉を紡ごうと口を震わせる。 「……っ、あ、あなたは誰?」 鏡花は確認のためにそう尋ねたのだが、それはくしくもあの出会の日と同じ言葉だった。 サアァと春特有の穏やかな風が流れていく。 その人物はくるりと体を回転させて、鏡花の方を向いた。 『彼』は両手を広げ、いつものように微笑み、こう言った。