【短】愛したくて、愛せなくて…。



その姿を見て俺は口を押さえてバレないように笑った。


「どうしたの?」


やっと口を開いた雪華は不思議そうに訊ねる。


「なんでもねぇ」


笑いを堪えながら返事して、ココアの入ったカップに手を伸ばす。


カップからはまだうっすらと湯気が立っていた。


一口だけ飲んで、雪華の方に目をやる。


スプーンでくるくるとカップの中を掻き回してるのが見えた。


「早く飲まないと冷めるぞ」


「…うん」


雪華は小さく返事してスプーンを皿に置き、ゆっくりとミルクティーを飲み始める。


両手でカップを包むようにして飲んでる姿が何故か可愛く見えた。


いやきっと、これは何かの間違いだ。


今は大人しいからそう錯覚してしまってるんだ。


うん、そうに違いない!


俺は自分に言い聞かせるように、残りのココアを一気に飲み干した。


舌が少しヒリヒリする。


よく考えればココアは運ばれてきたばかりなんだから、火傷するのは当たり前か。


舌の火傷ってなかなか治らねぇんだよな…。


失敗した…。


軽く凹みながら、再び右手で口元を押さえる。


小さくため息が洩れた。