最後にもう一度、拝殿を見つめる。 私にできることはやった。 達成感で心が軽くなった。 …さて、帰ろう。 来た道を戻ろうと後ろを振り返ると、 なんだか見覚えのあるシルエットが、鳥居をくぐってこっちに向かってくる。 「……翠」 呼び慣れたその名は、簡単に唇から零れた。 神様の吐息か、風がふわっと通る。 「……さくら?」 木々がそよいだせいか、 私の声が届いたせいか、 寒そうに下を向いていた翠がフイに顔を上げて、私を見つけた。