そう言って彼が取り出したのは

線香花火だった。

「隼人、知ってる?恋人同士で線香花火

に火をつけるときお願いするの。

それでね、最後まで残った方の願いが

叶うんだよ」

あたしがそう言うと、

「夏菜ってメルヘンチックじゃん」

そう言って笑う。

あたしたちは線香花火に火をつけた。

火薬の匂いが鼻の奥へ広がる。

二人のお願い、火の玉を見つめる。

ーポタッー

隼人の玉が先に落ちた。

「やったぁ。あたしの勝ちね」

ー隼人とずっと一緒にいられますよつにー

それがあたしの願い事だった。



花火が終わったあと、あたしたちは

河原で何度もキスを交わした。

隼人がポツリとつぶやいた。

「夏菜は俺がいなくなったらどうする?」

あたしは固まった。

「何言ってんの?変なこと言わないでよ」

隼人が変なこと訊くもんだから、

あたしは機嫌を損ねた。

だって縁起でもない。