「えっ、なんで!?」

「ずっと空見てたから。

なんかの歌にもあるじゃん?

涙がこぼれないようにとか」

「あたしはあれを見てただけ」

そう言って夜空を指さした。

「三日月?」

「そう」

「……んだよ。心配して損した」

彼は体の力が抜けたように、

その場に寝転んだ。

「隼人、心配症なんだから」

そう言ってあたしは笑った。

こんなにもこんなにも

彼に愛されてることが、すごくすごく

うれしかったから。

「はぁ。んじゃ本日のメインイベント!」

そう言って彼が袋から取り出したのは

花火だった。

ロケット花火からねずみ花火、

いろんな花火がある。

「夏菜、花火好きだろ?」

「常識」

そう言って彼は得意げに笑った。

可愛い八重歯を見せて。

あたしたちはロケットはなびをとばしたり

ねずみ花火から逃げたり、

とにかく笑いが絶えなかった。

「これで最後だな」