クールな先輩の心を奪う方法

仕事を始めるものの、美雨の事が気がかりで、携帯を取り出す。
連絡をしようとする時に限って、外線が入ったり、上司に呼ばれたり。

・・・結局、連絡が取れないまま夕方が来ていた。
仕事が終わったら、美雨の家に行ってみよう。

そう思っても、今日は大事な取引先の接待・・・。
その接待が終わったのは、午後９時を回っていた。

「…今日は行くのは止めた方がいいな」
そう呟いて、溜息をついた。

でも、連絡するくらいなら、この時間なら、美雨も起きているかもしれない。
声を聞きたくて、携帯を鳴らしていた。

『…もしもし？』
「…美雨、か？」

『…保田さん？…どうしたんですか？』
少しかれた声で、美雨の声が耳に届いた。

「具合は？」
『…まだ少し、熱がありますけど、大丈夫です。
…保田さんは、まだ仕事中ですか？』

「…今終わったところ」
『お疲れ様でした』

ガサガサ、ガタン。

突然そんな音が耳を貫いた。

「美雨？！」
『…すみません、驚きましたよね』

「どうした？」
『ちょっと、転んじゃって』

「具合、あんまり良くないだろ？」
『・・・そんな事』

「今から行くから、鍵だけあけておいて」
『保田…』

美雨の言葉が終わらないうちに、携帯を切った俺は、
心配のあまり、美雨の家に車をとばしていた。