「今、何を考えてるんだ?」



「何って……」



「告ったのは俺なのに、別のヤツの事を考えてるだろ」



「誰も慎君の事なんて……っ!」



「山嵜なんて、言ってねぇよ」



「……戸倉がからかうからでしょ」



「俺のせいでも良いけど、そんなんじゃ山嵜はお前の前から居なくなるな」



「それはないでしょ」



何故なら慎君は、お兄ちゃんの親友だから。

週にほとんどは夕食を共にしてるし、お兄ちゃんは私が結婚するまでは、何があっても一緒に暮らすと言ってる。

それなのに、どうして居なくなるの?



「山嵜が結婚してみろよ。家庭にはそれぞれその家族の時間があるんだ。疎遠になって、数ヶ月に1回、兄貴と山嵜が呑む位の付き合いになるのは目に見えてる」



「そんなのわからないでしょ?慎君は、私の事を妹のように接してくれるし」



「ダチの妹な」



「もう良い。黙って」



私と慎君との事は、部外者にはわからない。

お兄ちゃんがわかるかどうかって話。

だから戸倉は、私たちを否定する。

くっつけたいのかと思えば、離す作戦だろうか。

面倒くさい上に、私を怒らせないで欲しい。

このまま話してたら疲れる。

戸倉をクラスメイト以下に見てしまいそう。



「俺なら何があっても離さねぇから」



「…………」



離してくれて結構。

話してくれなくて構わない。

慎君が離れる筈はないと、私は信じてる。

誰も信じてくれなくても。