「…行くのか。」 「うん。」 「……父さんに、よろしくな。」 最後の心兄の言葉には何も返さなかった。 何も、と言ったら嘘だけど何も、言わなかった。 ただ、頷いた。 心兄は、笑って見送ってくれた。 「……行ってきます。」 しんと静まった静かな家の中で、誰も言ってなくても、いってらっしゃい、と聞こえた気がした。