そこまで考えて、はっとした。



なんで、泣きたくなるんだろう?


だって、私は、なにもないぢゃない。


辛くも、悲しくも、苦しくも、ないぢゃない。



確かに、私も、稔ちゃんも、優も淘も同時に失ったわけだし、辛いし、悲しいし、苦しい。


だけど、こう言えば悲しいけど、それは、時間が少しずつ《思い出》に換えてしまう。


だけど、秀は、違うぢゃん。


もう、もしかしたらずっと、喋れないかもしれないぢゃん。


優も淘も声も、突然一気になくしちゃったんぢゃん。



「稔ちゃん……」


「…え?」