ワンコと私








朝起きると…





「おはよう、一樹(かずき)君!」




見たこともない女が、寝ている俺の顔を覗き込んでいた。


普通なら瞬時に動いてこの女を拘束していた。

それが出来なかったのは、寝起きだからと言い訳しておこう。





「いい加減降りてくれませんか?」

「あ、重かった? ごめんねー」

「……」




なんだ、この女…。

へらへら笑って見るからに頭が悪そうなこの女は、よっぽど間抜けな泥棒らしい。

隙ありまくりだし。


それなのにどうやってこの部屋に入ったのか。

いくら寝ていると言っても、カンは良い方なんだけどな。

しかも堂々と挨拶をする間抜け泥棒となれば、直ぐに分かるはずだ。(いかにもつまづきそうだし)


それなのに気付かなかったのは何故なのか。

しかも俺の上に乗っていたこの女に。




「アンタ一体誰?」

「あ、私?」




まぁ、とりあえず少し質問をして。

後で縛って警察に突き出そうか。

万が一って事もあるし。


こんな見るからに馬鹿そうな女が今更逃げられるとは思ってもいないけど。


そんなことを思いながら面倒臭そうに尋ねた俺。

返ってきた言葉は何だと思う?




「私はね…、座敷わらしよ!」




だって。

何コイツ頭おかしいんじゃないの?

自分よりも年上の、良い歳した大人が何言ってんだか…。




「あのさ…、真面目に答えてくれません?」

「至って真面目です」




何度聞いても自分は座敷わらしの一点張りで埒が飽かない。

ダメだ…、あまりにも手に終えない。

そう判断した俺は、この女の腕を掴むと外へと連れ出した。


とっとと警察に付き出してしまおう。

あ、まず隣部屋の先輩に相談したほうが良いか…?




「一樹くーん」

「…」

「おーい、一樹くーん!」

「ちょっと黙ってもらえませんか……、っ!」




無理矢理連れ出される割りに抵抗もなかったこの女。

全く焦ることもなく間延びした声で俺の名前を呼ぶ女の方を振り向けば、何故かその姿は薄く…。

それは走るほど薄くなっていき、ついにその姿は消えた。





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