課長、ちゃんと聞いてください。

めったに笑顔を見せないあべちゃんが笑ってくれると、俺は泣きたいくらい、踊り出したいくらいに嬉しくなる。




俺はふふふと笑って、「さ~、行こ~」と歩き出した。





あべちゃんを連れて入った焼き肉屋は、俺の行きつけの店。



大学時代の同級生と行くような、けっして小ぎれいとは言えないような店だけど、味は格別なのだ。




今まで付き合った彼女は連れて来たこともなかったけど。



あべちゃんならきっと、見た目よりも中身が大事だって分かってくれると思ったのだ。





案の定あべちゃんは、肉を焼く煙で黒ずんで小汚い店内を見ても、顔色ひとつ変えなかった。




そして、タン塩を口に含んだ瞬間、「おいしいですね」と目を輝かせた。




もぐもぐと口を動かして一生懸命食べる姿が可愛くて、いとおしくて、俺はずっと笑いが止らなかった。