課長、ちゃんと聞いてください。

「ん~、焼き肉ひさびさだなぁ~」






会社の通用口を出て、夜空に向かって伸びをしながら俺が言うと、あべちゃんが「そうなんですか?」と首を傾げた。






「焼き肉、あんまり好きじゃないんですか」





「いや~、好きだよ~? 男の子だも~ん」





「はあ」





「でもねえ~、三十路越えるとねえ、昔みたいにお肉食べれなくなってきてさあ」





「なるほど」





「胃もたれしちゃうから~、ほどほどにしてるの~。特別な日だけにしてるんだよね~」






何気なくそんな会話をしていると、あべちゃんのまっすぐな目が俺を射た。




そして、小さな口をゆっくりと開いて。






「―――今日は特別ってことですか」