幼稚園の頃、デブでブスなことを理由に深沢拓海にいじめられていたこと。
洗脳されるように毎日ひどい言葉を浴びせられ、他のお友だちを遠ざけられたこと。
それによって幼稚園時代は深沢拓海に罵倒される以外に人とコミュニケーションを取っていなかったこと。
そして、それから自分に自信がなくなったということ。

人と関わり傷つくのが怖かったということ。
こんなこと、他人には些細なことなのかもしれない。
だけど私には鋭いナイフで、心臓を外してじわじわと死なない程度にいたぶられているようだった。
何が痛みなのか、何が辛いのか、人によって感じかたは違う。
他人からみればこんなことたいしたことじゃないかもしれないが私には耐え難い痛みだったのだ。

自分の胸の内を初めて他人に打ち明けた。
私がボソボソと詰まりながら喋るのに葵ちゃんは急かすことなく優しく聞いてくれていた。
それだけで嬉しかった。
胸の中のどす黒いものを全部ぶちまけたお陰ですーっと心が澄んでいくようだった。

『なるほどねぇ…』
『……』

珍しく葵ちゃんは暗い声を出した。
やっぱりこんな話聞きたくなかっただろうな。
葵ちゃんとももう口を聞いてもらえないのかな。
胸が締め付けられるように痛かった。

『高木ぃ!』

ガバッと葵ちゃんに抱き締められた。
突然のことに思考が停止する。

『大丈夫!高木は、ブスでもデブでもないよぉ!ちょうど良い!』
『…っ』

葵ちゃんが明るい声で言う。
さらにカウンター越しに涼介さんが私の頭をポンと撫でた。

『そいつ海にしずめるか?』

あまりに物騒な発言に大きく首を振る。

『深沢拓海に復讐しようよぉ』
『え』
『だな。葵と意見が合うのは微妙だが、俺もそう思ってた』
『でも…復讐って……』
『やっぱり海にしずめるか?』
『もー!そんなんじゃないよぉ』
『じゃあ、どうすんだよ』
『ふっふっふ、あたしに考えがあるのぉ』

真っ黒でにがーい復讐計画の始まり――