『……の』

『……の…!』

『詩乃!』

!?
『ゆいり…くん?』

『気がついたか!良かったぁ…』

『えっと…おはよう?』

『お…おはよう…?』

真っ白な空間、右も左も、上も下もわかりません。

『あ…膝枕…』

『うん、あん時と逆だな』

『そうだね…』

『俺の胸…触る?』

『…ちゅうがいい…』

『うん…』

ゆいりくんの唇…
あったかい…

『詩乃』

『ん?』

『俺さ、確かにいろんな可能性があったと思う』

『…うん』

『ひ孫に囲まれて大往生とかね』

『…ごめんなさい…』

『最後まで聞けって』

『…うん』

『可能性はあったかもだけど、こうして詩乃とあの世で結ばれる可能性もずっとあったんだよ』

『これも…可能性?』

『うん、生きて大往生も、死んで詩乃の彼氏も、可能性の一つ、いろんな可能性の中から今が選ばれただけ』

『ゆいりくん…』

『結果として俺は今幸せです、他の幸せの可能性なんて考えても無意味、今の幸せが大事、じゃね?』

『ゆいりくんは本当にそれでいいの?納得できるの?』

『うん、初恋が実るなんてロマン満載じゃん?』

『初…恋?』

『あ〜、うん、ずっと忘れてたんだけどさ、さっき思い出した、俺の初恋の相手は詩乃だよ』

『消しゴム貸してあげたから?』

『え?なんで知ってんの?』

『ないしょ』

また涙が溢れました。
でもさっきまでの涙とは違います。
これは嬉し涙。

『ところで詩乃さん』

『…はい?』

『いや俺は構わんのですがね…』

『…なんでしょう?』

『えっと…服…イメージしたほうが良くないですか?』

『あ…』