『私…裸だ…』

自分を上手くイメージできない…
少しだけ透けてるみたい…

『これからどうしたらいいんだろ?』

何もない空間。
右も左も、上も下もわかりません。

『ここ…私がゆいりくんに助けてもらった時に来たかも』

あの時はゆいりくんの中だったのかな?
それとも私の中?
今はゆいりくんの中?
それとも私の中?
どっちなんだろう…

『でもこれってゆいりくんとリンクしてるってことなのかな?』

考えててもしかたないので、私は歩き始めました。
どっちに行けばいいのか、自分がどっちに行っているのか、それさえわからないけど…
立ち止まっているよりはいい。
そう思えました。

どれくらい歩いたのかな…
1時間?
1日?
ここでは時間の感覚もはっきりしません。

一度振り向いてしまうと、自分がどっちに向かって歩いてたのかもわからなくなります。

それでも歩いていると、不意に右手を掴まれました。

『ひゃぁっ!!』

振り返るとそこには小さな男の子が立っていました。
5歳くらいかな?
私と同じ、裸で少し透けてる。
不思議と怖い感じはしませんてした。
むしろどこか懐かしいような…

『おねぇちゃんだれ?』

『私は詩乃、あなたは?』

『わかんない』

『一人で何してるの?』

『わかんない』

『おねぇちゃんと一緒に行く?』

『うん』

私は男の子の手を引いてまた歩き出しました。

『どこにいくの?』

『ん〜、おねぇちゃんもわかんない』

『へんなの』

『そうだね、変だね』

私達は歩き続けました。
どこまでも変わらない真っ白な景色の中、しっかりと手を繋いで歩きました。

『おねぇちゃんつかれた』

『そっか、ごめんね、少し休もうか?』

『うん』

男の子はその場で座り込みました。
私が隣に座ると、男の子は私の膝の上に座り直しました。
温かくて、柔らかくて、いい匂いがしました。

(かわいい)

『おねぇちゃんはここでなにしてたの?』

『んとね、大切な人を探してたの』

『たいせつなひと?』

『うん、大好きな人』

『ふ〜ん』

私の手を握る男の子の小さな手に、きゅっと力が入りました。

『うん?どうしたの?』

『………せに…』

『え?』

『ぼくのこところしたくせに!』

『あ…』

そうか、この子…
ゆいりくんなんだ…

!?
突然目の前が真っ暗になりました。
自分と小さなゆいりくん以外は何も見えません。

『ゆいり…くん?』

男の子は俯いていて表情は見えません。
私は優しく小さなゆいりくんを抱きしめました。