本屋の屋根の上で詩乃と人の流れを見ていた。

『前にもこうやって二人で人の流れ見てたよね』

『あ〜、あの時か、懐かしいな』

詩乃を殺した男を探すため、駅前で人混みを眺めていたあの日。
あの日の俺は、まだ何も知らなかった…
そう思うとなんだか懐かしく思えた。

『懐かしいってほど昔のことでもないよ?』

『そうなんだけどね、なんかすっげぇ昔のような気がする』

『変なの』

詩乃がクスクスと笑う。

『しかしアレだな、ノイズってカメラに映るんだな』

『そうだね〜』

『ってことはノイズって物理的な存在ってことなのか…』

『ファーストに干渉できるってことはそうなんじゃないかな?』

『そう言えば花子さんが遺族会本部の扉を吹き飛ばしてたなぁ』

(非物理的存在のセカンドから生まれるノイズが物理的…?)

《デカ長!見つけたで!》

《虎彦!?》

《歓楽街のホストクラブ裏!黒服のチャラい兄ちゃんらがたむろっとるわ!》

《防犯カメラの男もいるのか!?》

《いや、アイツはおらんけどな》

《は?だったら…》

《まぁ聞けや、この兄ちゃんら…全員ホルダーや》

《ホルダー!?》

《おう、ファーストやけどな、使い慣れてないんやろな、ノイズが吹き出しまくっとるわ》

《ビンゴだな》

《やろ?ヤバそうやし一旦本部にもど…あ!!花子ちゃん!?ちょ…》

《虎彦!?虎彦!?》

虎彦からのトークが途切れた。

『切れちゃったね…』

『暴れる花子さんが目に浮かぶよ…』

『どうする?』

『俺達も行ってみよう』

『私場所知らないよ?』

『俺も知らん!飛んでくしかないね』

俺達はなるべく急いで歓楽街へと向かった。
花子さんの戦闘力は重々承知している。
焦らずとも着く頃には終わっているだろう。
実にあっけない幕切れだ。