我が家…捜査本部に戻ると花子がいた。
机に突っ伏して寝ているようだ。

『あれ?花子さん戻ってたんすか?』

「…」

『寝てんのか』

『抜けてるんじゃない?』

『あぁ、そっちか』

抜ける…幽体離脱。
花子の特殊能力だ。
本人は忍術だと言い張っているが…

『しっかし…情報がなさすぎるよなぁ』

『人通りの多い場所で目撃者もなく人が消えるなんて…できるのかなぁ…』

『それなんだよねぇ…自警団がずっと見張ってたんだから…進展があるとすれば虎彦からだな』

『夜の担当者?』

『うん、夜は人通りも少なくなるし…』

『う〜ん…謎だらけだね』

『謎…か…』

(何か引っかかる…)

《唯里!詩乃ちゃん!》

《どうした虎彦?》

頭が割れそうなほどにけたたましい虎彦からのトーク。
俺と詩乃の両方に同時通話してるらしい。
そんなことできたんだ…

《新たな事件や!》

《事件?》

《夜の担当者も行方不明やねん!》

《は!?》

《とりあえず一旦捜査本部に戻るわ!》

《了解》

『ゆいりくん…』

『思ってたより大事だなこれ…』

しばらかすると虎彦がムーブしてきた。

『虎彦!詳しく!』

『おう、慌てなや…』

虎彦からの新情報。
1、監視者は虎彦含めて3人。
基本的に一人は予備人員で虎彦と夜間担当者が不在の場合のみ、代理で監視に当たっていた。
予備人員は無事が確認された。

2、夜間担当者が失踪したのはノイズ撤去後、佐和田と同日。

3、失踪時の所在は不明。

『自警団からも失踪者か…』

『これで俺もいよいよ他人事やなくなったな』

『遺族会をターゲットにした襲撃…の線はなくなったな』

『なんや自警団を疑ってたみたいな言い方やな?』

『疑ってたんじゃない、今も疑ってるよ』

『あ!?』

『自警団だけじゃない、遺族会も…潔白が証明されてない全てを疑ってる』

『そういうことか…』

『俺に対して潔白を証明できるのは俺自身と、ずっと一緒にいた詩乃だけだ』

『俺も疑われとんのか?』

『まったく疑ってないって言ったら嘘になるね』

『食えんやっちゃのぉ、それを正直に言うのは反則やで』

『保険だよ』

『え?え?』

詩乃は目をぱちくりさせている。

『詩乃ちゃんは駆け引きとか苦手そうやな?』

『信用できるだろ?』

『確かにな』

『え?えぇぇ?』

俺と虎彦はクスクスと笑った。
詩乃は不満気に頬を脹らませている。