俺と詩乃と虎彦は俺達の家へとムーブした。
梅澤さんは肉体がある時はムーブを使えないそうなので、公共の交通機関で後から来ることになった。

梅澤さんを待つ間、俺は虎彦に事件の概要を簡単に説明した。

『ふ〜ん、少なくとも俺が見てた時はそれらしいことはなかったで』

『そっか』

『ノイズに飲まれたんやったら報告は絶対にあるやろしな』

『ふむ…』

『ゆいりくん、花子さん来たよ』

『早かったな』

「お待たせしました」

『よし、ではただ今よりここを捜査本部とします!』

『おぉ、なんかかっこええな』

「なぜここなのでしょうか?」

『黒板があるから』

「?」

『じゃぁ花子さん、書記よろしく』

「なるほど」

俺達は改めて状況を整理した。

1、最初の行方不明者はノイズが詩乃から切り離された日の二日後に失踪。

2、そこから、俺達がノイズを移動させるまでの間に他の二人が失踪。

3、行方不明者の共通点は、詩乃のノイズを調査していたことのみ。

3、自警団がノイズの監視を始めたのはノイズ発生の三日後、最初の行方不明者が消えた翌日から交代で24時間体制で行われていた。

4、虎彦が監視を担当していた昼間はもちろん、交代後の時間帯にも事件性のある報告はされていない。

5、最後の行方不明者である佐和田の失踪はノイズ撤去後。

6、佐和田も含め、失踪者全員が最後に確認された場所はノイズの半径20メートル以内。

『とまぁ今のところはこんな感じかな』

『黒板に書くとわかりやすいね』

『ちゅうかあのノイズって詩乃ちゃんのやったん!?』

『あ…黙っててごめん』

『ごめんなさい…』

『いやええけど…むしろノイズを切り離したっちゅう部分にびっくりやわ』

「水辺様と横峯様のタレントとノイズが複雑に絡み合って起こった奇跡だと環様が仰られていました」

『奇跡ねぇ〜…』

梅澤さんと虎彦の間に蟠りはなさそうだ。

『んで?これからどうすんねん?』

『うん、虎彦は自警団を当たってほしい、特に夜の監視担当者の話を重点的にね』

『ほいよ』

『花子さんには遺族会内部をお願いします』

「遺族会内部に疑いを?」

『いや、失踪者の行動を洗い直して』

「了解」

『俺と詩乃は捨てて来たノイズの確認に行く、相互連絡のために全員フォローしよう』

こうして俺達は行動を開始した。