(純流…が仕組んだんだよな…なんのために?しのちゃんを喰うため?ってことはあいつもホルダー?)

この3日間ずっとそのことを考えてる。
狙いは俺なのか、しのちゃんなのか…
答えは出ない…

(環さんのオブザーブで純流かしのちゃんを見つけてもらうか…)

遺族会を完全に信用することはできない。
気は乗らないが他に手はない。
俺は渋々遺族会本部へとムーブした。

奥の部屋の扉の前。

『環さんいますかぁ?水辺ですぅ』

『水辺か!助かった!入れ!入れ!』

(あれ?男の声?)

部屋の中には佐和田がいた。
本来なら環が鎮座しているはずの椅子に腰掛けて。

『佐和田さん何してんすか?』

『飾りだ…』

『飾り?』

『気にするな…環さんなら3日前から不在だ』

『どこに?』

『さぁな…いつ戻るかもわからん』

『そっかぁ、困ったなぁ』

『伝言なら伝えるが?』

『んじゃぁ戻ってきたら連絡くれって言っといてください』

『わかった、伝えておこう』

『んじゃまた来ます』

そう言って踵を返すと…

『こんにちは水辺様』

『うおう!』

背後に見知らぬ女性が立っていた。
見た目は20代後半くらいだろうか、切れ長の目にどこか冷たさすら感じる。

髪を後ろで束ね、スーツを着込んだ気品のある出で立ち。
見るからに秘書と言った雰囲気だが…

(サーチにも引っかからなかった…いつからいたんだろう…)

『どうなさいました?』

『すみません、つい驚いてしまって…』

『気にすんなってばよ』

『へ?てばよ?』

『あ〜水辺、彼女のことは気にしないでくれ、うちの忍びだ…』

『はぁ…じゃぁまた…』
(忍び?)

『み…水辺!』

『はい?』

『行くのか?俺を残して…』

『すんません、佐和田さんほど暇じゃないんで』
(暇だけど)

本部を出て、辺りを宛もなく漂っていると、いつぞや俺達を遺族会に売り渡したオッサンを発見した。
確か…田井中 成法。

(あのやろう!)

俺はオッサンに近づき声をかけた。

『オッサン!いつぞやは世話になったなぁ!』

『ん?誰だお前?』

(コイツ!)
『あんたのタレコミのせいで苦労したいたいけな少年だよ!』

『あ〜、ホルダーとデートしてた変人か!』

『覚えててくれて嬉しいぜオッサン!』

『あぁ待て待て、今日は息子と待ち合わせなんだ、揉め事はかんべんしてくれよ』

『人のデートぶち壊しといて何勝手なこといってやがる!』

『わかったわかった、俺が悪かった、この通りだ!今日はかんべんしてくれ!』

『はぁ…まぁいいけど…』

『すまんな』

『あんたの息子さんもセカンドなのか?』

『いや、ファーストだ』

『ファースト!?と待ち合わせ!?』

『あぁ、うちは代々名のある霊能者一族でな、俺もこう見えて生前は坊主よ』

『おいおいこんなのが坊さんやってていいのか…』

『失礼なガキだな』

『んで?息子さんも霊能者であんたのことが見えるってわけか?』

『ご明察、てっわけだからまた今度にしてくれ』

『ふ〜ん、まぁ別にどうでもいいや』

オッサンと別れ再び宛もなく漂う。

(さてどうしたもんか…)