恋に落ちる時っていうのは、結構簡単なことで落ちてしまうもの。


移動教室の時に慌てて落とした筆箱を、


「これ、落としたよ」


なんてふわっと微笑んで渡されたら、心臓がドキッとして、


「ありがとう」


なんてお礼を言ってる時にはすっかり恋に落ちてるんだ。


しかもそれから顔を合わせる度に話をして、たまに


「可愛いよね」


なんて言葉と共に、髪を触られたりなんかしたら、もしかして彼も……なんて期待をしてしまったりするものだ。


きっとそう思うのは私だけじゃない筈。


いーや、絶対多くの女の子はそう思っちゃうんだ!


運命的な出会いに夢見てるからこそ。恋したいって思ってるからこそ。


そう思っちゃうもんなんだ。


仕方無い事だよ。


そう、仕方無い事。



「勘違いして告白して振られたなんて体験したのは、私だけじゃない筈……だよ」



キコッキコッと古びた音を鳴らす公園のブランコに一人座ってそう口にする。


涙でぐちゃぐちゃな顔はみっともない筈なのに、そんなの気にする元気も無い。


近藤葉月(コンドウ ハヅキ)、17歳。


本日勘違い告白の末、大好きな先輩に振られました。