「あー、そうです。……好きな人……出来ました」
好きな人が出来たっていうのを初めて言う人が畑野さんになるとは思ってなかった。
前は夕香にだったから。
そんな事を考えている私の耳に届くのはケロッとした畑野さんの声音。
『そっか、残念。葉月ちゃんの事、気に入ってたんだけどな』
「気に入ってたって、またまたー」
畑野さんにとって私はきっと『面白い子』レベルだったんだと思う。
そんな雰囲気の話し口調。
が、へらっと笑う私が見えていたかの様に今度は少しだけ真剣な声音が響く。
『嘘っぽく聞こえるけど本当だよ。まっ、まだ諦められる位だったから良かったけど』
「…………」
その台詞は返事に困るんですが!畑野さん!
そう突っ込みたいが、口を開く事が出来ないまま数秒の沈黙が訪れる。
顔が見えている間での沈黙ならまだしも、電話での沈黙ほど嫌なものはない。
何か話さないと!と気持ちは凄く焦るのに口は動いてくれない。



